「最後のV12の響きを」──そう願う方は少なくないはずです。イタリアの名門フェラーリが送り出すV12フラッグシップ、12チリンドリ。6.5L V12自然吸気エンジンが奏でる830PSの純粋なパワーと、9,500rpmまで回る官能的なサウンドは、まさに”V12の最後の砦”といってもいいでしょう。しかし、購入を真剣に検討する段階で、誰もが直面するのが「維持費ってどのくらいかかるの?」という疑問です。
本記事では、12チリンドリを10年間・10万km使ったときの実質コストを、できるだけリアルに試算します。「V12の魅力」だけでは済まされない現実も、しっかり数字で見ていきましょう。
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12チリンドリ購入の想定条件
今回のシミュレーションでは、以下の前提で計算しています。超高級V12フラッグシップの維持費は個別性が高いため、実際の試算は専門業者との相談が必要です。
- 新車購入価格:7,500万円(オプション装備込み想定)
- 保有期間:10年
- 走行距離:10万km(年1万kmペース)
- 10年後の下取り価格(残価):2,250万円
- 燃費:6km/L(V12自然吸気)
- ハイオク価格:180円/L
- 東京都内で専用ガレージを確保する想定
維持費一覧:1kmあたりのコストを試算
以下の表は、10年間の合計費用と、それを1kmあたりに換算した値です。
費用項目 | 総額(10年) | 1kmあたり | 内容 |
---|---|---|---|
減価償却 | 5,250万円 | 525円/km | 購入−売却 |
燃料費 | 約300万円 | 30円/km | ハイオク180円/L、燃費6km/L |
保険 | 約1,750万円 | 175円/km | 年175万円前後(車両価格により高額) |
整備・消耗品 | 約5,000万円 | 500円/km | V12エンジン、超高性能部品等 |
税金 | 約110万円 | 11円/km | 自動車税+重量税 |
駐車場 | 約1,500万円 | 150円/km | 専用ガレージ月12.5万円想定 |
合計 | 2億4,800万円 | 2,480円/km | – |
つまり、1km運転するたびに約2,480円が消えていくというのが、この車のリアルです。
年間・月間で考えると?

年間1万km乗ると仮定すると、以下のような金額になります。
- 年間:2,480円 × 10,000km = 約2,480万円
- 月間:2,480万円 ÷ 12ヶ月 ≒ 約207万円
- 1日あたり:約6.8万円(毎日乗る場合)
単純な移動コストとして考えると、プライベートジェットでの国際移動に近いレベルです。たとえば、東京-ロンドン間をプライベートジェットで移動すると約600万円かかることを考えると、12チリンドリの月間維持費の高さが理解できます。しかし、これは「V12の究極体験」や「830PSの純粋なパワー」「最後のV12自然吸気」という希少価値を含んでいませんし、プライスレスな感動も含まれています。
各費用項目の詳細解説
減価償却(5,250万円)
購入価格7,500万円から10年後の下取り価格2,250万円を差し引いた金額です。12チリンドリはV12自然吸気エンジン最後のフラッグシップとして希少性が極めて高く、適切にメンテナンスされた個体は比較的リセールバリューを保つことが期待されますが、それでも10年で約70%の価値減少は避けられません。
燃料費(300万円)
V12自然吸気エンジンで燃費6km/Lという設定での計算です。6.5Lの大排気量エンジンは相応の燃料消費となりますが、V12の魅力を考えれば許容範囲内といえます。
- 年間燃料消費量:約1,667L(10,000km ÷ 6km/L)
- 年間燃料費:約30万円(1,667L × 180円/L)
保険料(1,750万円)
超高級V12フラッグシップは車両保険料が極めて高額になります。車両価格7,500万円の12チリンドリでは、年間175万円程度の保険料は覚悟しなければなりません。さらに、V12エンジンの専門的な修理技術や特殊部品により、事故時の修理費用も極めて高額になります。
整備・消耗品(5,000万円)
12チリンドリの維持費で最も大きな負担となる項目です。V12エンジンの複雑性と高性能部品により、極めて高額な維持費が必要です。
- 定期点検・整備費: 約2,500万円(フェラーリ正規ディーラー)
- V12エンジン関連: 約1,500万円(12気筒分の消耗品等)
- タイヤ交換: 約700万円(超高性能タイヤで10回交換想定)
- ブレーキパッド・ディスク: 約300万円(カーボンセラミック)
特にV12エンジンは12気筒分の点火プラグ、イグニッションコイル、インジェクターなど、部品点数が多いことも維持費増加の要因です。
税金(110万円)
6.5L超のエンジンを搭載するため、自動車税は年間111,000円となります。また、車検時の重量税も含まれています。
駐車場代(1,500万円)
12チリンドリクラスの最高級フラッグシップには、温湿度管理とセキュリティが完備された専用ガレージが必須です。都市部で適切な環境を確保すると月額12.5万円程度はかかります。
12チリンドリを買う人の年収は?

正確な統計データは存在しませんが、実質コストを加味して考えると、年収2億円~5億円層がボリュームゾーンだと推定されます。
- 現金一括購入+年間2,500万円の維持費 → 純資産20億円以上
- 年収の12~15%程度が車両関連費用の目安
- V12文化への投資として購入する層が中心
つまり、最後のV12体験を楽しめるのは「超高年収+V12愛好家」の極めて限られた層というのが実態です。
維持費の特徴と注意点
特に高額になる項目
V12エンジン関連
- 12気筒分の点火プラグ:12本で約30万円
- イグニッションコイル:12個で約150万円
- インジェクター清掃:12基で約80万円
- バルブクリアランス調整:約120万円
高回転エンジン特性
- 特殊エンジンオイル:1回約20万円(年4回)
- タイミングチェーン交換:約500万円
- エンジンオーバーホール:約2,000万円
超高性能部品
- カーボンセラミックブレーキ:1台分約500万円
- ピレリP Zero Corsa特注タイヤ:4本約120万円
- アクティブエアロ修理:約300万円
維持費を抑える(相対的な)コツ
適切な使用方法
- 定期的な高回転域の使用
- 適切な暖機運転の実施
- V12エンジンの特性理解
正規メンテナンスの徹底
- フェラーリ指定間隔での点検実施
- V12専門技術者による作業
- 正規部品のみの使用
保管環境の最適化
- 温湿度管理された専用ガレージ
- 定期的な始動・運転
- 適切な燃料管理
他フェラーリモデルとの維持費比較
12チリンドリ vs SF90ストラダーレ
- 12チリンドリ: 年間約2,480万円
- SF90ストラダーレ: 年間約2,650万円
- 特徴: V12自然吸気 vs V8ハイブリッド
12チリンドリ vs 296GTB
- 12チリンドリ: 年間約2,480万円
- 296GTB: 年間約1,950万円
- 差額要因: V12の複雑性、車両価格
V12自然吸気の希少価値
維持費への影響
希少部品
- V12専用部品の限定性
- 将来的な部品価格上昇
- 専門技術者の希少性
投資価値
- V12自然吸気最後のモデル
- 年間減価償却の鈍化可能性
- コレクター需要の増加
特別な運用方法
グランドツアラーとしての使用
- 長距離ドライブでのV12体験
- ヨーロッパツアーでの使用
- プレミアムイベント参加
文化的継承
- V12文化の伝承
- 次世代への教育的価値
- 自動車史的意義
結論:「最後」は維持費とセットで現実に
フェラーリ 12チリンドリは、V12自然吸気エンジンを搭載する最後のフェラーリフラッグシップとして、自動車史に永遠に記録される名車でしょう。しかし、その維持には、10年間で約2億5,000万円が必要になる計算で、本当にごく一握りの方が所有できる車です。
この金額は、高級住宅数軒分に相当します。「最後のV12体験」として覚悟して購入する分には、所有する喜びは計り知れないものがあるでしょう。
しかし、「何となく憧れ」で手を出すには現実的ではありません。本記事の試算を通じて、自分の経済状況とV12への情熱度に見合った選択をしていただければ幸いです。
フェラーリ 12チリンドリは単なる移動手段ではありません。6.5L V12自然吸気エンジンが奏でる魂を揺さぶるサウンド、9,500rpmまで回る官能的な回転フィール、そして830PSの純粋なパワーなど、「最後のV12文化を体験する投資」として考える人にとっては、この維持費も価値ある出費となるでしょう。環境規制の時代において、もう二度と体験できない貴重な感動を、数字を正しく理解した上で手に入れることができれば、それは人生における最高の投資の一つとなるはずです。